定期公演 演目解説・演者紹介
1月◇午前の部◇
能「鶴亀」(つるかめ)
所は中国、古代の皇宮に臣下を引き連れて皇帝がお出ましになり、新年の節会が行われます。
正面に威風堂々と皇帝が着座すると、臣下が進み出で、毎年の嘉例のごとく鶴と亀を召し出し、舞を舞わせ、皇帝閣下には舞の後、月宮殿に渡られて舞楽を奏されることを言上し、鶴と亀が舞台に入って来て舞を舞います。
鶴と亀が皇帝に向かって礼をすると、皇帝は左右の袖の露を取って宮から下り、荘重な舞を舞い、臣下を引き連れて長生殿へ還御して行きます。小品ながら嘉例めでたい曲。
シテ 佐野由於(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「羽衣」(はごろも)
長閑な春の三保の松原。漁師白竜は、松の枝に美しい衣を見つけ、持ち帰ろうとしますが、世にも美しい女が「それは私の物ですから返して下さい」と呼びとめます。
白竜は衣の主が天女であることを知ると、もっと頑なになり返そうとしません。天に帰れなくなったと、天女があまりにも悲しむのを見て、舞を見せてくれるなら返そうと言います。
舞うためには衣がいるという天女の言葉を一旦は疑う白竜でしたが、天には偽りはないと言われ衣を返します。
シテ 木谷哲也(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「土筆」(つくづくし)
ある男が友を誘い、仲良く連れ立って野遊山に出かけました。
野辺に土筆を見つけ、河原に芍薬(しゃくやく)と、見つけたまでは良かったのですが、それについての大間違いの知識をひけらかしたばかりに、果ては喧嘩の相撲を取ることに…。
何もない舞台に、演者のせりふとしぐさによって、春ののどかな景色が描きだされます。こののどかさが、次第に険悪に変わるさまが対照的です。
------------------------------------------------
1月◆午後の部◆
能「巴」(ともえ)
木曽からやって来た僧は粟津ヶ原で女に出会います。
僧が声をかけると、女は僧が木曽から来たことを知り、ここは木曽義仲が最後に自害した場所なので、祀られている義仲に一緒に手を合わせて欲しいと頼みます。
夕暮れが近づき、僧に感謝しつつ女は去って行きますが、夜になり、今度は甲冑姿で長刀を手に現れます。女は巴御前の霊と名乗り、義仲の最後と自分の戦いを見せ、義仲の命令で木曽に戻らねばならなかった恨みを述べます。
シテ 武田伊左(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「山姥」(やまんば)
都で「山姥の山廻り」の曲舞で有名になった百万山姥という遊女が、伴の男達と善光寺参りの途中、俄かに暮れた山中で途方に暮れていると、一人の女に呼止められます。
女は自分の家に一行を案内し、遊女に曲舞の一節を謡ってくれと言います。不審に思う一行に女は山姥の本当の姿を問い、山に住む女ならばそれは正に我が身のことと答えて姿を消し、遊女の謡につられるように真の山姥の姿となって現れます。
大自然そのものが人間の姿となって現れたような山姥は、山廻りの様を見せ、山々峰々を廻って去って行きます。
シテ 小倉健太郎(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「寝音曲」(ねおんぎょく)
昨夜、主人が太郎冠者の家の前を通りかかると、良い声で謡いを謡っているので、翌日自分の前で謡いを所望します。
太郎冠者は度々謡わされるのが嫌なので、酒を飲まねば謡えない。女の膝枕でなくては謡えないと色々渋るが、結局謡う事になってしまいました。
だんだん酔いが回って来た太郎冠者、最後には主人に嘘がばれてしまいました。
------------------------------------------------
2月◇午前の部◇
能「老松」(おいまつ)
都に住む梅津某という男が太宰府の安楽寺に参詣すると、若い男と老人が現れて、紅梅殿と老松について、菅原道真が都にいたときに丹精にしていた梅と桜と松の内、梅は「東風吹かば匂い起こせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」という歌に呼応して太宰府に飛んで来て「飛梅」と言われ、別に後を追って来た松を「追松」と言い、唐国本朝のめでたき梅と松の謂れを語ります。
夜も更けて老体の松の精が現れ、荘重な舞を舞って客人をもてなし、御代を寿ぎ去って行きます。
シテ 内田芳子(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「箙」(えびら)
旅の僧が須磨の生田川に通りかかり、今を盛りと咲く梅の木を眺めていると、若い男に出会った。
僧が梅の木の名前を尋ねると男は「箙の梅」という名で、自分が付けた名であると答えます。そして生田の森の合戦に、源氏方の梶原源太景季が箙に挿した紅梅を笠印として奮戦したことを詳しく語り、自分はその景季の幽霊であると明かして消え去ります。
その夜の僧の夢に景季が若武者の姿で現れ、在りし日の戦さを再現し、供養を頼んで去って行きます。
シテ 金野泰大(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「舟ふな」(ふねふな)
主人は太郎冠者を連れて西の宮へ出かけることにします。
途中で神崎の渡しという大きな川に出てとても歩いて渡れそうにないので、向こう岸に見える舟を太郎冠者に呼ばせます。すると冠者は「ふなやーい」と呼び、主人が「ふね」と呼ぶようにたしなめると、冠者は古歌を引いて「ふな」だと言います。主人も負けじと古歌で「ふね」を主張します。
小賢しい太郎冠者を扱った軽妙な味わいがある曲です。
------------------------------------------------
2月◆午後の部◆
能「東北」(とうぼく)
都へ上って来た旅の僧は東北院にて梅の花を眺め、その梅の名を和泉式部と聞き、なお佇んでいると、美しい女性が声を掛け、ここは和泉式部の住いがあったところで、その梅は和泉式部ではなく、式部の愛した「軒端の梅」だと教えます。
さらに、我こそ和泉式部の霊であると名乗って消え失せます。その夜の僧の夢に美しい宮廷女性の姿となった和泉式部が現れ、東北院の有様を懐かしく思い出し、和歌の徳を讃え、舞を舞って、元の住処の方丈に帰ると見えて消え失せます。
シテ 後藤裕子(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「草薙」(くさなぎ)
恵心僧都が熱田神宮に参籠して七日の間、最勝王経を講じているところに、花を売る男女が通って来ます。
僧都が言葉をかけると、二人は夫婦で、男は熱田の神剣を守る神、女は齢を延べる仙女であると明かし、七日の結願の夜に再び現れようと言って消え失せます。
結願の日僧都の前に現れたのは、日本武尊命と熱田の源太夫の娘、弟橘姫の霊でした。日本武尊命は、夷退治の有様と草薙の神剣の謂れを語り、最勝王経の功徳を讃えて去って行きます。
シテ 川瀬隆士(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「柑子」(こうじ)
主人は、昨夜の宴会で三つ成りの柑子を土産にもらい、太郎冠者に預けたのを受け取ろうと冠者を呼び出します。ところが冠者の手元に柑子はありません。どういういきさつで無くなったかを語り始める太郎冠者ですが……。洒落も踏まえた太郎冠者の語りを中心とした曲。
------------------------------------------------
3月◇午前の部◇
能「竹生島」(ちくぶしま)
竹生島の弁財天に参詣するため琵琶湖に来た朝臣は、釣船に乗った老翁と若い女に出会います。臣下が竹生島までその船に乗せて欲しいと頼むと、最初は断られますが、初めて参詣する旨を重ねて訴えて乗船します。
老翁の案内で弁財天に参詣した臣下は、女人禁制のはずのこの島に若い女がいるのを訝しがりますが、女は神殿に入り弁才天となって現れ、舞を舞い、老翁も龍神となって宝珠を持って現れ、臣下にそれをささげ、勇壮な舞を舞います。
シテ 當山淳司(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「盛久」(もりひさ)
平維茂は信州戸隠山に鹿狩りに出掛け、山中で酒宴を催す美女達に出会います。不審に思い、遠慮する維茂を女達は引き留め、酒を勧め舞を舞います。
維茂が寝入ってしまうのを見計らった女の舞が急転すると、女達は消え失せますが、尚も維茂は寝入っています。ここに八幡宮の遣いが現れ、今の女は戸隠山の鬼女であると告げ、この太刀で退治したまえと言って太刀を授け、目を覚ました維茂は現れた鬼女と戦い、切り伏せて去って行きます。
シテ 水上優(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「二千石」(じせんせき)
主人は無断で旅に出かけた太郎冠者に腹を立てるが、京内参り(京都見物)に行ったとわびるので、機嫌を直し都の様子を尋ねる。太郎冠者が主人のために覚えてきた都で流行る謡を謡うと、主人は、それは祖先が恩賞を受けた時の大切な謡だと言ってそのいわれを語り、みだりに謡った太郎冠者を手打ちにしようとするのだが…
「二千石」とは地方長官のこと。シテの語りと心理変化の表現が見どころです。
------------------------------------------------
3月◆午後の部◆
能「桜川」(さくらがわ)
人商人の男は桜子という子供を買い取ったが、その代金と文を母に届けて貰いたいと頼まれて、桜の馬場に赴きます。文を読んだ母が慌てて止めようとしたのですが、人商人の姿はもうそこにはありませんでした。
嘆き悲しむ母は文の続きを読むと、桜子を探す為に東へ下ります。常陸国の磯辺寺に留まる桜子が僧と共に桜の名所桜川で花見をしている所に、美しい四つ手網を肩に母が通りかかります。
母は僧と言葉を交わし、桜子のことを探していると伝えると、僧は桜子を引き合わせ、二人は再会を喜び、帰って行きます。
シテ 柏山聡子(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)
能「須磨源氏」(すまげんじ)
宮崎の神官藤原興範は、須磨の浦で老人に出会います。
老人は興範の問いに答えて若木の桜のことを教え、さらに須磨に流されていた光源氏が再び都に戻り、栄華を極めて行くその生涯について詳しく語ります。あまりに詳しい物語を不審に思った興範が尚も尋ねると、老人は我こそ光源氏であると明かし、去って行きます。
その夜桜の下に旅寝する興範の夢に、衣冠束帯の殿上人の姿で光源氏が現れ、青海波の遊楽に惹かれて舞を舞います。
シテ 金井賢郎(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「呂蓮」(ろれん)
宿の主人は、旅の僧の話を聞いて出家を希望する。僧は、主人が女房や親類に既に了解を得ていると聞き剃髪し、更に名前をつけて欲しいと言われたので、「蓮」の字にいろはをつけた名をいくつか提案し、結局呂蓮坊と名づける事にする。そこに何も聞かされていない妻がやってきて…。
にわかに仏心に目覚め出家をしようとする主人が、妻に責め立てられて翻すところに、移り気な人の心の面白さが感じられます。洒脱味あふれる演技をお楽しみ下さい。