nishi_調査中_定期公演 演目解説・演者紹介
4月◇午前の部◇
能「右近」(うこん)
鹿島の神職の者が、北野の右近の馬場に花をめでにやって来ると、花見車に乗った上臈達に出会います。上臈と神職は「見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは あやなくけふは詠め暮らさん」という業平の歌そのままの景色に興を催し、言葉を交わします。花を廻る物語をし、名所を案内した上臈は、桜葉の神と名乗り、月の夜神楽を待ちたまえと言って花の陰に消え失せます。
その夜、神職の夢に北野天満宮の末社、桜葉の神の本体が現れ、優雅な舞を舞い、天に帰って行きます。
シテ 金森隆晋(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)
能「百万」(ひゃくまん)
奈良西大寺の辺りで拾った子供を伴い、男がやって来たのは人々で賑う嵯峨野の清涼寺でした。何か面白いものはないかという男に、寺の者はここに百万という女物狂いがいて、念仏を称えると現れるからと言って念仏を称えると、百万という女物狂いが現れます。
百万は我が子に別れ、狂乱となった自分を嘆き、奈良坂を越えて京まで上って来た様を見せ、集った人々の中に我が子の姿を探します。
子供から自分が百万の子であると聞いていた男は最後に親子再会を促し、めでたく二人は故郷に帰って行きます。
シテ 髙橋憲正(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「茶壷」(ちゃつぼ)
中国地方から京の栂尾へ茶を買い付けに来た男、帰りに昆陽野の宿で知り合いに酒を飲まされて酔いつぶれ、往来で寝込んでしまいました。その様子を見たすっぱ(詐欺師)は男が背負っている茶を詰めた壺を自分の物のようにしてしまいます。
目を覚ました男は大騒ぎ、どちらも自分の物と譲らないので、二人はそれぞれ、目代(代官)の前で茶壺の入日記(荷造りした商品の中に入れておく目録)の内容を申し上げることになりました。
4月◆午後の部◆
能「芦刈」(あしかり)
津の国難波の里に、貧しさ故に別れた夫婦がいました。妻の方は都へ行き、さる方の若子の乳母となり、生活に余裕も出来たので、故郷に別れた夫を捜しにやって来ます。
夫の日下左衛門の行方を尋ねますが、土地の者は知らぬと答えます。さらに行方を捜していると、そこに芦売りの男が現れます。男は芦が難波の名物で、葦と芦は同じ物であると語り、御津の浜の謂れから笠を使った舞を舞います。
二人はお互いに気付き、夫は身を恥じて去ろうとしますが、妻の心情に打たれ、衣服を改め、舞を舞い、一緒に都に帰って行きます。
シテ 髙橋亘(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「杜若」(かきつばた)
今を盛りと咲き誇る杜若。三河の国八橋を訪れた僧は、一人の女に呼び止められます。女は業平が東下りの途中で、この八橋で詠んだ杜若の歌の話をし、自宅へ僧を招きます。
その夜、女は昔、業平が宮中での豊明節会で身に着けた高子の后の美しい衣と、冠を身に着けて現れます。
不思議に思う僧に、女は我こそは杜若の精であると明かし、業平の東下りの様を舞って見せ、草木国土悉皆成仏の喜びを僧に告げると、夜の白むと共に消え失せます。
シテ 朝倉大輔(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「千鳥」(ちどり)
急に客が来ることになったので、主人は太郎冠者に酒屋へ行って酒を一樽貰って来いと命じます。しかし、酒屋に行くと、前のつけも払っていないので代金なしでは酒はやれぬと断られます。
困り果てる太郎冠者ですが、主人の供で尾張の津島祭を見に行った時の話をすると、徐々に酒屋は引き込まれ夢中になっていきます。太郎冠者は隙を伺い、酒樽を狙おうとしますが…。
5月◇午前の部◇
能「忠度」(ただのり)
須磨の浦を訪ねた僧は、一本の桜の木の下で老人に出会います。
夕暮れになり宿を請う僧に老人は、この花の陰ほど相応しい宿はあるまいと「行き暮れて木の下陰を宿とせば、花や今宵の主ならまし」という忠度の歌を口ずさみ、僧が藤原俊成と縁があると知って自ら忠度と名乗り、都に上る事があったら俊成に言伝して欲しいと言って去って行きます。
その夜木の下でまどろむ僧の夢に、公達姿の忠度が現れると、岡部六弥太と戦った最後の有様を語ります。
シテ 藪克徳(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)
能「胡蝶」(こちょう)
吉野の山奥から京へやって来た僧が、一条大宮で折から咲き誇る梅の木を眺めていると、美しい女が声をかけて現れます。
不審に思った僧が名を尋ねると、自分は蝶の化身であり、四季折々の草花に戯れる身ではあるが、唯一早春に咲く梅にだけは縁がなく、僧の功徳で梅の花に戯れることが出来たらと言って消え失せます。
その夜の僧の夢に美しい蝶が現れ、僧のおかげで遂に梅の花に出会えたことを喜び、舞を舞います。
シテ 小林晋也(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「樋の酒」(ひのさけ)
主人が太郎冠者に米蔵、次郎冠者に酒蔵の番をするよう言いつけて出かけます。次郎冠者が早速酒蔵の酒を飲み始めるので、太郎冠者はうらやましくて仕方がありません。そこで次郎冠者は、酒蔵から米蔵へ樋を渡して酒を流し、太郎冠者にも飲ませることに成功します。すっかり調子に乗った二人は…。
本舞台と橋掛かりをそれぞれ蔵に見立て、能舞台ならではの構造を上手く活かした狂言です。樋から酒を飲む場面はもちろん、にぎやかな狂言小舞がいくつも登場する酒宴も見どころです。
5月◆午後の部◆
能「雲林院」(うんりんいん)
芦屋の里に住む公光という人は、伊勢物語を愛読していましたが、ある夜霊夢を得て、都北山の雲林院にやって来ます。
あまりに美しい桜を愛で、一枝折ろうとしたところを老人に咎められ、言葉を交わし霊夢の話をします。老人は夢の続きを見給えと言い、何となく在原業平の事を仄めかして消え失せ、その夜の夢に美しい貴公子の姿で現れます。
業平は高子の后との恋の物語を語って、優雅な舞を舞い、夢が覚めると共に儚く去って行きます。
シテ 東川尚史(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「土蜘」(つちぐも)
病床にある源頼光を見舞うために、典薬の頭より遣わされ薬を持った胡蝶がやって来ます。気が弱くなっている頼光を励まして胡蝶が去ると、不気味な僧形の男が病床近くまで迫って来ますが、頼光が刀を抜いて切り付けると僧は蜘蛛の糸を投げかけて消え去ります。
騒ぎを聞きつけて参上した家来が、血の跡を辿って怪しいものを退治しましょうと約束し、葛城山の奥深く分け入って行き、蜘蛛の糸を吐く怪異のものと対決します。
シテ 葛野りさ(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)
狂言「箕被」(みかずき)
連歌に熱中して家を顧みない夫は、自慢の発句を披露する会を開きたいと、妻にその用意を命じる。妻は貧しさを理由に反対し、どうしても会を催すなら離縁してほしいと言う。夫は暇(いとま)のしるしに、妻の使い慣れた箕(み)を渡すが、それを被った(箕を被く=箕被(みかずき))妻の後ろ姿を見て、思わず発句を詠みかける。そこで妻は…。
夫婦の情愛がしみじみと描かれている佳作です。掛詞が巧みに織り込まれた連歌の掛け合いが、一つの見どころとなっています。
6月◇午前の部◇
能「春日龍神」(かすがりゅうじん)
栂の尾の明恵上人は唐に渡り仏跡を尋ねる前に、暇乞いに春日明神にやって来ます。そこに宮守の老人が現れ、釈迦の在世中であればともかく、今では春日のお山こそ霊鷲山であると言い、入唐の必要などないと上人を説得して、もし約束してくれるなら奇瑞を見せようと去って行きます。
上人が待っていると、大地を揺るがして竜神が現れ、さらに上人に入唐渡天を止めるように請願し、去って行きます。
シテ 佐野弘宜(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「楊貴妃」(ようきひ)
玄宗皇帝は最愛の楊貴妃を失い、悲嘆のあまりその魂魄のありかを訪ねて来るようにと、方士に命じます。
あちらこちらを探した方士は遂に蓬莱宮に至り、ここでやっと楊貴妃に巡り会い、楊貴妃亡き後の帝の嘆きの深さを伝え、確かに楊貴妃に会った事を帝に奏上するため形見の物をと玉の冠を一度は受け取りますが、二人しか知らない契りの言葉を望みます。
妃は七夕の夜に交わした言葉を教え、冠を着けると昔を懐かしんで舞を舞い、再び冠を賜った方士が帰って行くのを一人見送ります。
シテ 東川光夫(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「真奪」(しんばい)
あちこちで立花の会が催され、立花に使う「真」を探しに、太郎冠者はご主人様に召連れられて東山へ出かけます。
道中、ちょうどよい見事な「真」を持った通りすがりの男に目をつけた太郎冠者は、その「真」をうまく奪ってしまおうとご主人に提案し、男の持っている「真」を、ちょっとだけ見せて欲しいなどとうまく近寄って、まんまと「真」を手にします。
6月◆午後の部◆
能「経政」(つねまさ)
御室仁和寺の僧都行慶は、守覚法親王に命じられ、一の谷で戦死した平経政の為に、愛用の青山という琵琶を仏前に据え、管弦講の弔いを行います。
夜半になり、燈の中に生前の姿の経政の霊が現れ、守覚法親王の特別な配慮により青山の琵琶を愛玩することを許された礼を述べ、安置してある琵琶を奏でます。
仁和寺を懐かしみ、夜遊の名残を惜しむ管弦の内に、修羅の苦患が襲い来たり、修羅道の戦いに落ちた自らを恥じて、最後に燈を吹き消して去って行きます。
シテ 関直美(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「望月」(もちづき)
信濃の国(長野県)の住人安田庄司友春は、同族の望月秋長と口論の末、殺されてしまいます。家臣の小沢刑部友房は、一旦近江の国(滋賀県)守山の宿で、甲屋という旅館の主となって身をひそめています。
一方、安田の妻子は望月の追及を逃れて、流浪の果てに甲屋に至り、安田の庇護下に入り、更にまた仇敵望月主従も偶然甲屋の客となります。小沢は安田妻子を芸人に仕立て、自らも獅子の芸を見せて望月を油断させ、友春の子花若と共に、見事に仇を討ちます。
シテ 辰巳満次郎(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「蝸牛」(かぎゅう)
蝸牛(かたつむり)で祖父(おおじ)の寿命が伸びるという事で主人は、太郎冠者に蝸牛を捕まえてくるように頼みます。
蝸牛を知らない太郎冠者は主人に「頭が黒く、腰に貝をつけ、角を出し、藪にいる」と教えてもらい、藪の中を探しに行きますが…そこで出会ったのは旅途中の山伏です。
はたして太郎冠者は無事に蝸牛を捕まえる事が出来るのでしょうか…
9月◇午前の部◇
能「敦盛」(あつもり)
源氏方の武者「熊谷直実」は、平敦盛を自らの手にかけたことに深い思いを抱き、出家して蓮生法師となり、敦盛の菩提を弔うために一の谷に向います。
そこに笛の音と共に草刈の男達が現れ、「草刈の笛木樵の歌」の話をし、一人の男が残ります。残った男は蓮生に弔いを頼み、敦盛の霊であると仄めかして消えてしまいます。
その夜在りし姿で現れた敦盛は、合戦前夜の陣中の有様を見せ、自らの最後を語って蓮生に感謝し、後生を託して去って行きます。
シテ 當山淳司(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)
能「巻絹」(まきぎぬ)
勅命により千匹の巻絹が熊野に集められることになりましたが、都よりの使いが到着しません。実は使いの男は途中で「音無天神」に立ち寄り、梅の花を見て天神に一首の和歌を捧げていたのです。
期限が設けてあるのに何故遅くなったと、臣下は問答無用と男を縛ってしまうと、音無天神が乗り移った巫女が現れ、縛めを解くように言います。巫女は男が心中で詠んだ歌の下の句を詠って疑いを晴らし、和歌の徳を讃えて舞を舞います。
小書「五段神楽」通常、神楽は途中で「直り」と言って囃子の譜が神舞に変わるのですが、小書「五段神楽」になると直りがなく神楽の譜のままで舞い、キリの前に「破ノ舞」が入ります。
シテ 土屋周子(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「雷」(かみなり)
都の藪医者が東国へ下り、武蔵野の広い野原で空から落ちて来た雷(かみなり)に出会います。
したたかに腰を打った雷は、医者をみつけると威丈高に治療を命じます。腰に打たれた鍼(はり)を大げさに痛がる雷ですが、治療が効を奏して快癒すると、治療代のかわりに五穀成就を約束して昇天します。雷の生態の面白さ。
9月◆午後の部◆
能「天鼓」(てんこ)
唐土の物語です。ある時天より鼓の降って来る夢を見た母により生まれた天鼓は、その後本当に降って来た鼓と共に育ちます。天鼓少年が打つ鼓が誠に妙なる音なので、帝はこれを宮中に召し上げ、逃げようとした天鼓は呂水に沈められてしまいます。
ところがこの鼓誰が打っても鳴らず、帝は天鼓の父「王伯」を呼んで打たせると見事に鳴り、感動した帝は、王伯に天鼓の霊を弔う事を約束し、管弦講で弔っていると天鼓が現れ、鼓を打って戯れ、喜びの舞を舞います。
小書「盤渉」は、後半、天鼓が舞う「(黄鐘)楽」が一調子音程の高い「盤渉楽」に変わり、華やかな印象になります。
シテ 小倉健太郎(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

能「殺生石」(せっしょうせき)
那須野を通りかかった玄翁という僧は、石の上を飛ぶ鳥がふらふらと落ちるのを見て不審に思っていると、「その石のそばに立ち寄るな」と言いながらに女が現れます。
女はその石は「殺生石」と言って、帝の側にいて王朝を傾けようとした「玉藻の前」という狐の精が、安倍泰成に正体を見破られ、ここに飛んできて石となった謂れを語ります。
女が石の陰に消え失せ、玄翁が石に向かって祈ると狐の本体が現れ、三浦、上総の両介に退治された有様を見せます。
シテ 武田伊左(クリックで能楽師情報をご覧いただけます)

狂言「磁石」(じしゃく)
都へ上る田舎者が、すっぱ(悪党)に騙されて宿へ連れ込まれ、宿の亭主(実は人買)に売られそうになりますが、この相談を盗み聞きした田舎者はあわてて逃げます。
跡を追ってきたすっぱが太刀をぬいて威すと、田舎者は磁石の精だと名乗って、遂にすっぱの太刀を一口に呑んでしまうと威し返し、まんまと太刀を奪うとすっぱを追い込みます。



