能×声優『夜能~語り部たちの夜~』『烏帽子折』公演レポート
▪️はじめに
『夜能~語り部たちの夜~』は、2018年に始まった新感覚の能公演。声優による朗読、脚本家や宝生流二十代宗家・宝生和英先生を交えたトーク、そして能の上演という構成で進行します。
今回の演目は『烏帽子折(えぼしおり)』。2025年5月24日、東京・宝生能楽堂で夜能「義経三部作」の第ニ弾として上演されました。
朗読パートの脚本はBQMAP主宰・奥村直義さん、語り手は細谷佳正さんが担当。細谷さんはこれまで『祇王』『清経』『鞍馬天狗』など、源平合戦を題材にした夜能にも出演されています。
能の上演では、シテ(主役)を野月聡先生、子方(子役)を藪俊太朗さんが勤めました。
当日は、能が初めてという方も多く、幅広い世代の皆さまにお越しいただき、会場は満席となりました。
▪️あらすじ
牛若は鞍馬山を飛び出し、三条吉次、吉六兄弟と旅を続けていました。しかし、鏡の宿で追っ手が迫っていることを知り、追っ手の目を欺くため元服を決意し烏帽子屋を訪れます。その店主の妻が源氏ゆかりの者であることが判明すると、牛若の成長を喜びます。そして牛若は再会を約束して旅立ちます。その後、赤坂の宿で吉次の宝を狙う大盗賊・熊坂長範に襲われますが、見事に切り伏せるのでした。
▪️朗読
朗読では、細谷佳正さんの語りと、雅楽・十七絃箏の調べが美しく重なり、物語の情景が自然と目の前に浮かび上がってくるようでした。
鼎談では、「本番直前まで、どんなふうに表現するか何度も悩み、調整を重ねた」と語っていた細谷さん。その言葉の通り、ひとつひとつの言い回しや間の取り方には繊細な工夫が感じられました。
また、能装束を身につけた姿も凛としており、舞台に気品を添えていました。
▪️印象的な場面について
🪭牛若の元服
物語の前半、シテが子方に烏帽子をつける場面は、大人になるための元服の儀式を表しています。武士にとって重要なこの儀式は、能の中でも特別な意味を持ち、子どもの成長と門出を祝う大切なシーンです。
今回、牛若を演じた藪俊太朗さんは、牛若と同じ年頃。堂々とした立ち姿や澄んだ張りのある声が、観客の心を引きつけていました。
🪭烏帽子屋の夫婦
牛若から烏帽子の礼として小刀を受け取った烏帽子屋の夫婦。夫が刀を妻に見せると、妻は涙ながらに、「私は源義朝に仕えた鎌田正清の妹。この刀は、義朝さまが牛若さまの誕生時に授けた守り刀です」と語ります。
橋がかりで語られるこの場面は、静かな中にも強い感動があり、観客の心に深く残りました。
🪭松明占い
熊坂の手下として登場する3人の盗賊たちは、狂言方が演じます。夜の襲撃の成功を占うため、松明を使って様子を探るのですが、次々に返り討ちに遭ってしまいます。
松明が斬られたり踏み消されたり、最後には背中を斬られて逃げ出すというテンポのよい展開に、客席からは思わず笑いが漏れました。ユーモラスで舞台のアクセントとなる楽しい場面です。
🪭牛若と盗賊たちの戦い
後半の見どころは、牛若と熊坂長範一味との戦いの場面。きらびやかな装束をまとった盗賊たちが次々と倒れていくさまは、それぞれ演出が異なり、非常に見応えがありました。
鼎談では宝生和英先生が「能では戦いの場面をあえてゆっくりと見せます。まるで映画『マトリックス』のスローモーションのように」と話しており、所作の中に緊張感と美しさが感じられました。
▪️オンデマンド配信
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▪️次回予告
夜能の義経シリーズはいよいよクライマックス!
【公演情報】
『船弁慶ー後之出留之伝ー』
2025年10月11日(土)
開場16:00/開演17:00
会場:宝生能楽堂
朗読:鈴村健一
脚本:長田育恵
雅楽:三浦元則 ほか
能 :小倉健太郎・寳生知永 ほか
【チケット発売日】🎫
2025年7月12日(土)10:00~
詳細は公式HPや宝生会の公式X「宝生会公演情報・能LIFE・夜能」からもご確認いただけます。
またSpotifyで配信中の「夜能ラジオ」では、「夜能」をもっと楽しめる情報がたくさん!宝生和英先生がパーソナリティーを勤め、朗読担当の俳優・声優をお呼びして楽しいトークをお届けします。